オフィスのリフォーム費用を調べると、さまざまな坪単価や工事事例が見つかります。しかし、壁紙や床を更新する内装工事と、自社ビルの空調・電気設備、外壁、防水、耐震性まで見直す改修では、同じ床面積でも費用は大きく異なります。
特に社屋や自社ビルでは、建物を新しく見せるだけでなく、業務をどこまで続けながら工事できるか、設備を何年先まで使える状態にするか、将来の人員や事業内容の変化に対応できるかを考える必要があります。
また、既存建物の改修では、図面と実際の建物が異なることや、天井・壁の内部を開けて初めて劣化や配管の問題が分かることもあります。最初に内装の希望だけを決めると、後から必要な工事が増え、予算や工期を見直すことになりかねません。
この記事では、既存のオフィスや社屋、自社ビルの改修を検討する経営者・後継者に向けて、オフィスのリフォーム費用を左右する8つのポイントを解説します。新築・建て替え・改修・移転のどれが適しているか迷っている方は、先に社屋の新築・建て替えで確認したい8つのポイントもご覧ください。

オフィス・社屋リフォームのイメージ ※実在の施工事例ではありません
「オフィスリフォーム」という言葉には、賃貸オフィスの内装変更から、自社ビル全体の大規模改修までが含まれます。工事範囲が違えば、必要な設計、調査、申請、工期も変わるため、坪単価だけを並べても正確な比較にはなりません。
| 改修の種類 | 主な工事内容 | 費用を左右する要因 |
|---|---|---|
| 部分的な内装更新 | 床・壁・天井、照明、受付、会議室など | 仕上げ材、造作家具、工事時間、既存部分の再利用 |
| オフィス全体の改修 | レイアウト、内装、空調、電気、通信、防災設備など | 設備容量、配線経路、間仕切り変更、家具、仮移転 |
| 社屋・自社ビル全体の改修 | 構造、外壁、防水、断熱、設備幹線、エレベーター、共用部など | 築年数、劣化状況、耐震性、法規、事業継続、工事の分割 |
費用を確認するときは、「何坪の工事か」だけでなく、「建物のどこまでを、どの性能まで改修するのか」を揃える必要があります。インターネット上の事例金額を見る場合も、内装工事だけなのか、空調・電気・防災設備、設計監理料、家具、移転費まで含むのかを確認してください。
最初に決めるべきことは、仕上げの色やデザインではなく、社屋を改修する目的です。目的が曖昧なまま工事範囲を増やすと、費用をかけても経営上の課題が残る可能性があります。
例えば、次のような課題を経営側と利用部門の双方から整理します。
すべてを一度に行う必要はありません。安全性や漏水対策など緊急度の高い工事、業務効率を改善する工事、企業価値を高める工事に分け、優先順位を決めることで、必要な投資と将来に分けられる工事が見えてきます。
オフィスのリフォーム費用は、完成後に見える部分より、既存建物の状態によって大きく変わることがあります。特に築年数の経過した社屋では、内装計画の前に建物全体を確認することが重要です。
主な調査項目は次のとおりです。
図面が残っていても、過去の工事が反映されていない場合があります。必要に応じて現地計測、劣化調査、構造調査、設備調査を行い、残せる部分と更新すべき部分を整理します。
執務室が古く見える場合でも、建物の優先課題が内装とは限りません。屋上防水や外壁の劣化を放置すると、漏水によって内装や設備まで傷み、後から修繕範囲が広がることがあります。
また、旧耐震基準の建物や、過去に用途・荷重・間取りが変わっている建物では、耐震診断や構造の確認が必要になることがあります。間仕切りを撤去したい場合も、その壁が構造上必要な壁か、設備や防火区画と関係するかを確認しなければなりません。
内装、構造、外装、防水を別々に考えるのではなく、建物全体の修繕時期を重ね合わせて工事範囲を決めることで、足場や仮設、撤去・復旧の重複を減らせる場合があります。
既存の社屋だから自由に改修できるとは限りません。間取りや用途、避難経路、防火区画、排煙、消防設備などを変更する場合は、建築基準法や消防法に関する確認が必要です。工事内容によっては、確認申請、用途変更の手続き、消防署との協議などが必要になることもあります。
さらに、建築物の解体・改修工事では、法令に基づく石綿(アスベスト)の事前調査が必要です。調査結果によっては、除去方法、工期、仮設、廃棄物処理の費用が変わります。着工直前に判明すると工程全体へ影響するため、早い段階で確認します。
法規や既存不適格の状況は、建築時期や過去の増改築、今回の工事内容によって判断が異なります。見た目の改修計画を先に確定するのではなく、建築家が行政・消防・専門家と確認しながら進めることが重要です。
オフィス改修では、設備工事が総額に大きく影響します。働き方の変化によって、パソコン、サーバー、Web会議機器、照明、空調などに必要な電力や通信環境も変わっています。
古い空調機を更新するだけでも、室外機の設置場所、配管経路、天井内のスペース、受電容量、工事中の空調停止期間を確認する必要があります。レイアウト変更に合わせて空調のゾーニングを見直さなければ、席による温度差や無駄な運転が残る場合もあります。
設備は内装より更新周期が異なります。今回の内装工事に合わせて更新するもの、点検・修理で継続使用するもの、将来工事へ分けるものを整理し、省エネ性だけでなく、維持管理と交換のしやすさまで検討します。既存の非住宅建築物に対する省エネ改修も国の施策として進められており、外皮と設備を一体で考える視点が重要です。
受付や応接室を美しくするだけでは、社屋全体の使いやすさは改善しません。社員、来客、搬入、セキュリティ、管理の動線を分け、日常業務に合う配置を検討します。
例えば、来客が執務スペースを通らず会議室へ移動できる計画、部署間の連携を促す配置、集中作業とWeb会議の音が干渉しないゾーニング、将来の組織変更に対応できる間仕切りや配線などが考えられます。
一方、社屋は取引先や採用候補者が会社を体験する場所でもあります。受付、外観、サイン、素材、照明を企業の考え方と結び付けることで、単なる模様替えではなく、企業の信頼やブランドを伝える空間になります。
社屋改修では、工事費だけでなく、事業への影響を含めて計画する必要があります。休業期間を短くすることだけを優先すると、夜間・休日工事や細かな分割工事が増え、仮設と養生の繰り返しによって費用が上がる場合があります。
主な方法には、次のようなものがあります。
全面移転して一度に工事する方が合理的な場合もあれば、分割工事が適している場合もあります。工事費、仮移転費、工期、業務への影響を同じ表で比較し、会社にとっての総負担が最も小さい方法を選びます。
オフィスのリフォーム費用を検討するときは、施工会社の工事見積だけを予算にしないことが重要です。社屋改修の総事業費には、条件に応じて次のような費用が含まれます。
見積を比較する場合は、各社が同じ図面・仕様・工事範囲を見積もっているかを確認します。「一式」と書かれた項目や別途工事が多いと、契約後に追加費用が生じやすくなります。金額だけでなく、数量、単価、含まれる工事、含まれない工事、工期、保証、施工体制まで確認します。
建築家が施工者とは別の立場で設計図書を整え、見積内容を確認することで、価格だけでは見えない工事範囲と品質を比較しやすくなります。設計監理の役割については、建築家の設計料|設計監理の価値と業務内容をご覧ください。
大阪市の「NJビル」は、繁華街に建つ事務所・店舗の複合用途ビルについて、ファサードとエントランスを改修した事例です。
外観を新しく見せるだけでなく、日射エネルギーの制御に有効なダブルスキン形式を、改修によって実現しています。また、外壁の腰部をアルミからチークの無垢材へ変更し、無機質なビルが連続する街並みに対して、やわらかな印象を加えています。
この事例は、建物全体を建て替えなくても、既存建物の課題と改修目的を絞り込むことで、環境性能、企業・店舗の印象、街との関係を同時に改善できることを示しています。
建物の規模、工事範囲、設備の停止時間によって異なりますが、区画や階ごとの分割工事、仮事務所の併用、休日工事などで業務を続けられる場合があります。ただし、細かな分割は工期と仮設費が増えることもあるため、全面移転案と総費用を比較して判断します。
改修内容を確定する前に比較します。構造、耐震性、法規、設備、必要面積、将来の事業計画を確認し、改修後に何年使用できるかを含めて判断します。大規模改修の見積後に建て替えを検討すると、調査や設計をやり直す可能性があります。
はい。現状の課題、今後の事業計画、完成希望時期、止められない業務を整理する段階から相談できます。既存建物を確認したうえで、優先工事、将来に分ける工事、改修・建て替え・移転の比較を行います。
オフィスのリフォーム費用は、床や壁の面積だけでは決まりません。改修の目的、既存建物の状態、構造・外壁・防水、法規、空調・電気設備、業務動線、工事中の事業継続、総事業費によって大きく変わります。
大切なのは、内装の希望を先に積み上げるのではなく、会社が今後どのように働き、成長し、建物を使い続けるかを整理することです。そのうえで、残す部分、更新する部分、将来へ分ける部分を決めると、費用をかける優先順位が明確になります。
アーキソシエイツでは、大阪・兵庫・京都を中心に、オフィス、社屋、店舗、医院などの改修に対応できる建築家と、設計を実現できる工務店をご提案します。内装改修で解決できるか、建物全体の更新が必要か、建て替え・移転と比較すべきか決まっていない段階でもご相談いただけます。