「フルリノベーションには、どれくらいの費用がかかるのでしょうか」
「インターネットで調べた金額と、実際の見積金額が大きく違うのはなぜでしょうか」
最近、アーキソシエイツにも、このようなご相談が増えています。
リフォームやリノベーションの費用は、建物の構造、築年数、劣化状態、工事範囲、求める性能や仕上げの水準によって大きく異なります。
さらに現在は、建築資材や住宅設備の価格に加え、工事に携わる職人の人件費も上昇しています。そのため、数年前の施工事例やインターネット上の価格を、そのまま現在の計画に当てはめることが難しくなっています。
この記事では、2026年現在の建築費の状況と、フルリノベーションの費用目安、物件によって金額が異なる理由を分かりやすくご説明します。

「フルリノベーション」には、法律などで定められた明確な工事範囲や価格基準がありません。
内装と住宅設備を一新する工事をフルリノベーションと呼ぶ場合もあれば、構造体を残して内部を解体し、配管、配線、断熱、間取りまで全面的に見直す工事を指す場合もあります。
アーキソシエイツが主に取り扱う、間取り変更、住宅設備の更新、内装工事、一定範囲の配管・配線工事などを含むフルリノベーションでは、次の金額が一つの検討目安となります。
これは、マンションや既存の構造がしっかりしている戸建住宅で、外壁、屋根、防水、耐震補強などの大規模な工事を必要としない場合を想定した工事費の概算です。
すべての建物に共通する定額価格ではありません。建物の状態や工事内容、使用する住宅設備や素材、造作家具の量などによって、実際の費用は変わります。
外壁、屋根、防水、サッシの全面交換、断熱改修、耐震補強、構造補強などが必要な場合は、この金額を上回ります。
また、設計監理費、構造調査費、各種申請費、仮住まい費用、引越し費用、家具・家電購入費などは、工事費とは別に必要になる場合があります。
国土交通省が公表している「建設工事費デフレーター」では、住宅建築の工事費水準は、2020年度を100とした場合、2025年度には122.6となっています。
統計上は、2020年度から2025年度までの5年間で約22.6%上昇したことになります。
ただし、これは住宅建築全体の平均的な価格変動を表す指標です。
実際の工事費は、建物の構造、工事内容、使用する建材や設備、求める性能と品質によって変わります。
アーキソシエイツが実際の建築計画や見積りを通して確認している範囲では、2020年頃に3,000万円程度で検討できた内容が、現在では4,000万円を超え、計画によっては4,500万円近くになることもあります。
これは、すべての建築工事が一律に50%上昇したという意味ではありません。
構造が良好で利用できる部分が多い建物と、断熱改修や構造補強、外回りの工事まで必要な建物とでは、費用の上昇幅も異なります。
既存建物の活かし方、間取り変更の範囲、設備や素材の選び方、工事の優先順位を整理することで、必要な性能と空間の質を保ちながら、ご予算に合わせて計画を調整することは可能です。
現在の建築費上昇には、複数の要因が関係しています。
木材、鉄鋼、コンクリート、断熱材、石膏ボード、サッシ、ガラス、配管材料、電線など、建築には多くの材料が使用されます。
キッチン、浴室、洗面、トイレ、給湯器、空調、照明器具などの住宅設備も価格が上昇しています。
一つひとつの価格差は小さく見えても、建物全体では多くの材料や設備を使用するため、工事費に与える影響は小さくありません。
建築工事には、大工、左官、電気、給排水、塗装、防水、タイル、内装など、多くの専門職が関わります。
建設業界では職人の高齢化と人材不足が続いており、経験と技術を持つ職人の確保が以前より難しくなっています。
国土交通省が公表した2026年3月適用の公共工事設計労務単価も、全国全職種平均で前年度より4.5%引き上げられ、14年連続の上昇となりました。
公共工事の単価が住宅工事へそのまま適用されるわけではありませんが、建設業界全体で人件費が上昇していることを示す一つの参考になります。
現在のリフォームでは、内装をきれいにするだけでなく、断熱性能、耐震性能、省エネルギー性能、バリアフリーなど、建物の基本性能を改善したいというご要望が増えています。
築年数の古い建物では、窓や断熱材の更新、給排水管や電気配線の交換、構造補強などが必要になる場合もあります。
完成後には見えにくい部分ですが、今後も長く安全で快適に住み続けるために重要な工事です。
2026年は、米国・イラン間の軍事衝突を含む中東情勢と、ホルムズ海峡をめぐる物流の混乱が、原油価格や輸送費に影響を与えています。
日本は輸入する原油の9割以上を中東地域に依存しているため、中東情勢の変化を受けやすい状況にあります。
鉄鋼、アルミ、セメント、ガラス、樹脂製品などは、製造や運搬に多くのエネルギーを必要とします。建材を現場へ運ぶトラック、工事で使用する重機、海外から輸入する建材や設備も、燃料費や物流費の影響を受けます。
ただし、中東情勢や原油価格は変動が大きいため、今後の建築費を一律に予測することはできません。
現在は、以前よりも見積りの有効期間が短くなり、計画や発注の時期によって金額が変わりやすい状況にあると考えるのが適切です。
壁紙や床材の張り替え、キッチンや浴室の交換、一部の部屋だけの改修などは、一般的に部分リフォームと呼ばれます。
工事範囲と使用する製品が決まれば、比較的費用を把握しやすい工事です。
一方、本格的なフルリノベーションでは、次のような工事が含まれます。
どの工事まで含むかによって、必要な費用は大きく変わります。
既存の構造を利用するため、新築より大幅に安くなると思われることがありますが、改修工事では解体、撤去、養生、既存部分の補修など、新築にはない工事も必要です。
そのため、残す構造体の量だけで費用を判断することはできません。
同じ40坪の住宅でも、次の条件によって費用は大きく変わります。
木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造では、解体方法、構造補強、配管・配線の施工方法が異なります。
特に鉄筋コンクリート造では、壁や床にコンクリートが使用されているため、間取り変更や設備の移設に専門的な検討が必要です。
雨漏り、腐食、シロアリ被害、配管の老朽化、防水性能の低下などは、外観や内装を見るだけでは判断できない場合があります。
築年数だけでなく、これまでの維持管理や修繕の状況によっても必要な工事は変わります。
キッチン、浴室、トイレなどを既存の位置で更新する場合と、別の場所へ移動する場合では、配管工事の内容が異なります。
吹き抜けの新設、階段位置の変更、ホームエレベーターの設置などを行う場合は、構造面からの検討も必要です。
内装を整える工事と、断熱、耐震、空調、給湯設備まで見直す工事では費用が異なります。
キッチン、浴室、床材、タイル、石材、建具、照明、造作家具なども、素材や製作方法によって金額が変わります。
既存建物の改修では、事前に十分な調査を行っても、壁、床、天井の内部を完全に確認できない場合があります。
解体後に、既存図面と実際の施工が異なっていたり、構造材の劣化、漏水跡、古い配管、想定していなかった補修箇所が見つかったりすることがあります。
そのため、計画段階では工事費を予算の上限まで使い切らず、解体後に判明する追加工事に備えた予備費を考えておくことが大切です。
必要な予備費は、築年数や構造、調査できる範囲によって異なるため、計画初期に建築家や施工会社と相談して設定します。
中古住宅や中古マンションの購入を検討されている場合は、できる限り購入前に建築の専門家へ相談することをおすすめします。
購入前に相談することで、希望する間取りが実現できるか、どのような改修が必要か、購入費と改修費を合わせた総額が適切かを検討できます。
インターネット上には「フルリノベーション○○万円」「坪○○万円」といった事例が数多く掲載されています。
しかし、その金額だけで比較する際には注意が必要です。
同じ「フルリノベーション」という表現でも、次の項目が含まれているかどうかで総額は大きく変わります。
掲載されている金額が工事費の総額なのか、一部工事だけの金額なのか、設備、設計監理費、消費税などを含むのかを確認しなければ、正確な比較はできません。
大切なのは、表示された総額だけではなく、「その金額に何が含まれ、どのような性能と品質の建物になるのか」を確認することです。
現在の建築費は、2020年頃と比べて大きく変わっています。
しかし、費用が上昇しているからといって、希望するリフォームやリノベーションができないとは限りません。
このような設計上の工夫によって、必要な性能と空間の質を保ちながら、予算配分を整えることができます。
建築家の役割は、要望をすべて加えて工事費を上げることではありません。
建物の状態、暮らし方、将来計画、ご希望、ご予算を整理し、どこに費用をかけ、どこを合理化するかを検討することも重要な役割です。
アーキソシエイツでは、戸建住宅、マンション、鉄筋コンクリート造住宅をはじめ、オフィス、店舗、医院、社屋などのリフォーム・リノベーションについてもご相談を承っています。
このような計画初期の段階でも、お気軽にお問い合わせください。
建物の条件とご要望に合わせて、経験豊富な建築家とともに、将来を見据えた改修計画をご提案いたします。
工事範囲や素材、造作家具などによって費用が変わることが分かる、マンションのフルリノベーション事例をご紹介します。
中古マンションを一度スケルトンに解体し、間取りと内装を全面的に見直した事例です。既存の格式を生かしながら、家具との調和、素材選び、住宅としての機能性を丁寧に整えています。施工事例を見る
この記事に記載した金額は、2026年8月時点の一般的な検討目安です。
実際の費用は、建物の状態、地域、構造、工事範囲、採用する設備や仕上げ、施工条件などによって異なります。
正式な費用は、現地調査、設計内容および施工会社の見積りに基づいて決定されます。