建築家への依頼を検討するとき、「設計料は工事費の何%なのか」「工事費とは別に支払う価値があるのか」と疑問を持つ方は少なくありません。
アーキソシエイツでは、住宅の設計監理料について、工事費の10〜15%を一つの目安としてご案内しています。詳しくは設計監理料についてのQ&Aでもご確認いただけます。
ただし、設計監理料の意味は、料率だけでは判断できません。この費用には、ご要望と予算の整理、敷地や法規の確認、基本設計・実施設計、構造や設備との調整、見積内容の確認、工事が設計図書に沿って進んでいるかの確認など、建物の完成までを支える仕事が含まれます。具体的な業務範囲は契約によって異なります。
多くのハウスメーカーや工務店では、設計と施工を同じ会社または同一グループ内で担います。一方、建築家との家づくりでは、建主が建築家と設計監理契約を結び、工務店とは別に工事請負契約を結ぶ方法があります。設計監理と施工を分けることで、自由な設計と、施工者とは異なる立場からの確認機能を持たせやすくなります。
さらに、建築家の設計は、どの工務店でも同じように実現できるとは限りません。建物の構造や規模、素材、造作、細部の納まりに合った施工経験と技術力を持つ工務店を選ぶことも重要です。この記事では、建築家の設計料の目安と業務内容、設計と施工を分けるメリット、工務店選びの考え方を、実際の施工事例とともに解説します。

建築家の「設計料」と呼ばれる費用は、一般には設計と工事監理を合わせた設計監理料を指します。アーキソシエイツが住宅でご案内している目安は、工事費の10〜15%です。
単純に料率を掛けた場合の概算は、次のとおりです。
これはあくまで料率を用いた単純な計算例であり、実際の見積金額ではありません。消費税の扱い、料率を掛ける工事費の範囲、構造・設備設計や各種申請の費用が含まれるかは、契約内容によって異なります。
建築士事務所の業務報酬については、2024年1月9日に施行された令和6年国土交通省告示第8号に基準が示されています。しかし、国が住宅の設計監理料を一律10〜15%と定めているわけではありません。
報酬は、建物の用途や規模、構造、設計の難易度、必要な業務量などを踏まえて算定され、最終的には契約当事者間で決まります。特に既存建物の改修では、調査を進めることで新たな課題が分かることもあるため、業務範囲の確認が欠かせません。
設計監理料を図面作成だけの費用と考えると、その価値は分かりにくくなります。建築家の仕事は、計画の初期から完成まで複数の段階に及びます。
契約内容に応じて、一般に次のような業務を行います。
建築士法でいう工事監理とは、工事を設計図書と照合し、設計図書どおりに実施されているかを確認する仕事です。工事中には、施工図や材料・設備機器の検討、現場での確認、必要な指摘、確認結果の建主への報告などを行います。
また、契約内容に応じて、工務店から提出された見積内訳、工程表、施工計画などを確認し、建主が判断するための材料を整えます。設計変更や代替案が必要になった場合も、単に金額を下げるだけでなく、設計意図や性能を損なわないかを検討します。
工事監理と施工管理は同じものではありません。工務店の施工管理は、工程、安全、品質、職人や専門業者の調整など、現場を動かすための管理です。建築家の工事監理は、施工者とは異なる立場から、工事が設計図書に沿っているかを確認します。
建築家が毎日現場に常駐してすべての作業を確認するという意味ではなく、工事内容に応じて、現場確認、記録、試験結果、施工図などを合理的な方法で確認します。具体的な確認方法や頻度は、契約前に確認しておくことが大切です。
多くのハウスメーカーや工務店では、設計と施工を一体で行います。窓口を一本化しやすく、標準仕様や工法が整っていることは、設計施工一体方式のメリットです。希望する建物がその会社の仕様や得意分野に合っていれば、効率よく計画を進められる場合があります。
一方、独立した建築家へ依頼する場合は、建主と建築家、建主と工務店がそれぞれ直接契約します。この設計施工分離方式には、次のような特徴があります。
設計と施工を分けることは、建築家と工務店を対立させることではありません。建築家は設計意図と品質を確認し、工務店は施工技術によって建物を形にします。それぞれの責任を明確にしながら協働する仕組みです。
設計施工分離の考え方については、建築家と建てる本当のメリットでも詳しくご紹介しています。
神戸市の「六甲のアクアコート」は、施主が当初、ある大手住宅メーカーへの依頼をほぼ決めていたところから始まりました。その後、建築家による中庭のある住宅を見て、水庭のある住まいを希望し、建築家との家づくりを選ばれました。
五角形の敷地に2台分の駐車スペースを確保し、コの字型の建物と中庭を配置。中庭の一部を水庭とし、道路側のアルミ格子によってプライバシーを守りながら、採光と通風を確保しています。既成の仕様に要望を当てはめるのではなく、敷地と暮らし方から住まいを組み立てた事例です。
お客様の声では、アーキソシエイツが打ち合わせに同席したことで、建築家との家づくりを安心して進められたと評価していただいています。設計監理料の価値は、個性的な形をつくることだけでなく、暮らしの希望を具体的な空間へ変えていく過程にもあります。
設計施工一体方式では、設計に関する費用が工事代金や諸経費の中に含まれ、独立した項目として見えない場合があります。設計料が別に表示されていないことと、設計業務に費用がかかっていないことは同じではありません。費用の表示方法だけでなく、総予算と業務内容を比較する必要があります。
独立した建築家へ設計監理料を支払う主な価値は、次の5点に整理できます。
設計施工を分ければ必ず工事費が安くなる、あるいは不具合を完全に防げるということではありません。価値は、建主が判断するための情報を増やし、設計内容、工事費、施工品質の関係を確認しながら計画を進められる点にあります。
大阪市の「まちなかの最小限住宅」は、間口2.3mという狭小敷地に建つ鉄骨3階建て住宅です。敷地の狭さだけを見れば制約の大きい計画ですが、建物の背後には四季を感じられる公園がありました。
そこで、各階をスキップさせながら空間をつなぎ、公園の光と借景を各ゾーンへ取り込みました。固定した食卓、腰掛けを兼ねた棚、見せる収納など、限られた面積を暮らしの豊かさへ変える工夫も行われています。
建築家の価値は、敷地の不利な条件を隠すことではなく、条件を丁寧に読み解き、その場所にしかない可能性を見つけることにもあります。
優れた設計図があっても、それだけで建物は完成しません。建築家の設計では、既製品だけでなく、造作家具、特注部材、素材の組み合わせ、複雑な開口部や細部の納まりなどを扱うことがあります。構造や設備との調整を含め、設計意図を読み取り、現場で具体化する施工力が必要です。
工務店には、それぞれ得意な構造、規模、工法、仕上げがあります。一般的な工務店の技術力が低いという意味ではなく、建築家の設計や難易度の高い改修に、すべての工務店が同じように対応できるとは限らないということです。
建築家の設計を実現する工務店には、例えば次のような力が求められます。
アーキソシエイツでは、工務店の実績や規模などを確認し、登録建築家が実際に施工を依頼したことのある工務店をご紹介しています。詳しくは建築家・工務店の登録基準をご覧ください。
計画の規模、構造、条件に合わせて工務店を検討し、入札・相見積りを行うことも可能です。アーキソシエイツの強みでは、工務店選定の考え方をご案内しています。
建築家と工務店は、役割が分かれていても目的は同じです。建築家が設計と工事監理を担い、計画に適した工務店が施工を担うことで、設計意図を現実の建物へつなげます。
神戸市の「HOUSE TsU」は、築40年以上の木造住宅を改修した事例です。外壁を残しながら内部をスケルトン状態とし、現場発泡断熱材による断熱性能の向上と、細やかな構造補強を行いました。
既存の日本庭園との関係を生かすため、間仕切りの位置や仕上げ素材を調整し、キッチンも多人数で作業できるよう家具工事で製作しています。施工は株式会社コハツ、プロデュースはアーキソシエイツです。
既存建物の状態を読みながら、構造、断熱、空間、素材、造作をまとめる改修では、設計側の判断と施工側の技術を切り離して考えることはできません。独立した役割を持ちながら、建築家と工務店が協働する意味を示す事例です。
10〜15%という料率を見るときは、どこまでの業務が含まれているかも確認しましょう。次の費用は、建物や契約によって設計監理料に含まれる場合と、別途になる場合があります。
同じ料率でも、含まれる業務が異なれば単純には比較できません。金額だけでなく、成果物、確認業務、別途費用まで書面で確認することが重要です。
設計監理料を比較するときは、次の7項目を確認してください。
料率の低さだけで依頼先を決めると、必要だと思っていた業務が含まれていないことがあります。反対に、最初は高く感じても、調査、実施設計、見積確認、工事監理まで含まれていれば、計画全体を支える費用として評価できます。
必ず高くなるとは限りません。設計施工一体方式では、設計に関する費用が工事代金などに含まれ、独立して表示されない場合があります。分離方式では設計監理料が見えるため高く感じやすいものの、工事費を含む総額、業務範囲、完成する建物の内容を同じ条件で比較する必要があります。分離方式が必ず安くなるという意味でもありません。
設計施工分離方式では、計画内容に適した工務店を検討できます。アーキソシエイツでは、建築家とともに工務店を選定し、計画に応じて入札・相見積りを行うことも可能です。希望する工務店がある場合は、その工務店が設計内容や構造、工期などに対応できるかを確認します。
工事監理は、建築家が毎日現場に常駐する施工管理とは異なります。工事の段階や内容に応じて現場を確認し、施工図、材料、試験結果、工事写真なども用いて、設計図書との照合を行います。訪問頻度や確認方法は契約によって異なるため、事前確認が必要です。
住宅では一つの目安になりますが、既存建物の調査範囲、構造、劣化状況、改修内容によって業務量が大きく変わります。新築以上に個別性が高いため、料率だけでなく、調査や設計、工事監理に何が含まれるかをご確認ください。
建築家の設計料は、住宅では工事費の10〜15%が一つの目安です。しかし、その対価は図面の作成だけではありません。ご要望と予算を整理し、敷地や法規を読み解き、設計図書を整え、見積内容を確認し、施工者とは異なる立場から工事を確認するための設計監理料です。
また、建築家の設計を形にするには、計画に合った工務店が必要です。設計と施工の役割を分けながら、建築家と技術力のある工務店が協働することで、自由な発想を現実の建物へつなげることができます。
設計監理料を検討するときは、何%かだけでなく、誰が設計し、どのように見積を確認し、どの工務店が施工し、工事中に誰が何を確認するのかまで比較してください。
アーキソシエイツでは、計画内容やご要望に合う建築家と、その設計を実現できる工務店をご紹介しています。施工会社をまだ決めていない段階はもちろん、ハウスメーカー、工務店、建築家のどこへ相談すべきか迷っている段階でもご相談いただけます。