第一回 建築家とつくる家づくり(後半) | 建築家紹介|関西の建築家とこだわりの住宅を|アーキソシエイツ
TALK

「家づくり」対談

第一回 建築家とつくる家づくり(後半)

我々アーキソシエイツが目指す理想の「家づくり」とは?
第一線で活躍されている建築家、工務店を交えてそれぞれが想い描く家づくりについて対談しました。

 

【対談メンバー】
建築家 生山 雅英 氏
建築家 田口 喜章 氏
建築家 真銅 祥一朗 氏
株式会社岩鶴工務店 岩鶴 祥司 氏
アーキソシエイツ 村木 睦弘

 

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前半の続き―――

 

 

(問)金額面ではハウスメーカーとはどう違うのでしょうか。

 

<岩鶴氏>
建築家の家は一品生産なので決して安くはないのですが、ハウスメーカーの家も決して安くはないです。
ハウスメーカーさんは確かに大量発注において仕入れを安くしているはずですが、それ以上に人件費、営業費、広告費や展示場費用など様々な費用が住宅の金額に入ってきます。もちろん下請けの工務店の管理費や経費も。
話がそれますが、これだけ時間がかかる家づくりは工務店はもちろん建築家も決して儲からないですよね。もし工務店に建築家の家づくりをして儲けようという考えがあるならば、建築家のみなさんには失礼ですがそれは大きな間違いです。(笑)
家づくり、ものづくりが楽しいから建築家との家づくりをしているわけで。

 

<真銅氏>
そうですよね。
申し訳ないですが建築家はクライアント側にたって仕事してますから工務店さんに無理をお願いすることも多いですしね。なによ工事の時間もかなりかかってますよね。
ハウスメーカーの場合、スタートが一緒だと我々が設計が終わる頃にもう完成している計算になりますからね。

 

<田口氏>
私はこの仕事をしていてクライアントとの出会いも楽しいです。
自分が様々な方と出会い新しい発見や自分にはない考え方があり、そのなかで満足して頂くには長い期間が必要になりますから、設計期間を短縮するわけにはいかないですよね。

 

<村木>
金額面に戻りますが、ハウスメーカーが出している坪単価と建築家が話をする坪単価には大きな違いがありますよね。
ハウスメーカーが基本的に最初に話をする坪単価は空調が別、照明器具別、外構別、造作家具別、地盤補強別だったりすることが多いですが、建築家の方は完成した住宅を単純に坪数で割ってるのでハウスメーカーさんが別途にしているところがかなり
含まれてるんですよね。
一般的にはそこまでご理解されてないお客様が多いので坪70万、坪80万のお話をすると高いという印象をもたれる方が多いですが、総額で考えると決してハウスメーカーより高くないと考えて欲しいです。

 

 

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(問)建築家への依頼内容は様々なのでしょうか?例えば建替するのかリフォームするのか迷ってる段階でも相談できますか?

 

<真銅氏>
本当に相談内容は様々ですね。

 

<田口氏>
そうですね。LDKのみのリフォームの相談もありますし。
とりあえずお話を聞いて建築家が入ったほうがいいのか、計画内容によっては工務店に直接依頼されたほうが良い場合もありますし。

 

<真銅氏>
建替かリフォームするのかは本当にケースバイケースですね。
リフォームでも全面改装、構造補強まですると新築ぐらいかかる場合もありますし。あとは法規の問題と今の家にどれだけ愛着があるかですね。総合的にご提案してご判断頂いてます。

 

 

(問)リフォームの時には建築家が現場をみればすべて判断できるのでしょうか?

 

<真銅氏>
それもケースバイケースですね。
建築家で判断がつく物件もあれば、やはり技術的なアドバイスが必要な時もありますので、その時は早めに工務店さんにも現場を見てもらってます。

 

<生山氏>
ご相談を受ける中で、家族の問題を解決してほうが早い場合もありますよね。家族と言っても個人の考え方が大きく違う場合もありますから。
また、そんな背景の中建築家が現場をみてリフォームせずに片付けてこのまま住んだほうが良いですよとアドバイスすることもあります。すべてのご相談を何がなんでも契約したいとは考えてないので。

 

<村木>
そうですよね。
当初この仕事を始めた時、お客様からご相談を受けて建築家のほうから計画止めておいたらということがあってびっくりしたんですが、今では建築家の仕事の本質が理解出来るようになってきたので、それもお客様にとってはいいことなのかなと。

 

<真銅氏>
住宅を設計するときは、10年20年後まで、クライアントの生活を想像して設計しているのでそういうこともありえますよね。

 

 

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(問)建築家と長くコミュニケーションをとっているとクライアント自身が考え方が変わることがあるのでは?

 

<真銅氏>
それはありますよね。
設計が終わる頃には住宅に対する考え方が変わってる場合があります。

 

<田口氏>
ありますよね。
当初は一般的な住宅雑誌を見てた方でも、建築設計の専門誌をみるようになったり。クライアントも熱心な方が多いです。

 

 

(問)建築家との家づくりはなにが違うのか?

 

<田口氏>
まず、スタートが違いますよね。
一品生産でその家族だけの為につくるのか、ハウスメーカーみたいに商品として住宅を考えるのか。間取りだけでなくそのクライアントの考え方やキャラクターもみて設計を進めて行きますから。

 

<真銅氏>
建築家はクライアントが考えてるよりその上を提案しようとしますから。クライアントに言われた通りに設計していたら価値がないですよね。
それは奇抜なものをつくるのではなく、こうした方がクライアントが望んでるものに近いですよと。クライアントは基本専門家ではないので気づいてないところが当然たくさんあるのでそれは建築家が提案してあげるべきですね。

 

<生山氏>
クライアントに満足して頂くのは最低条件。完成して喜んで頂けたら本当にこちら側も嬉しいですしね。
ただ、それだけでは単なる設計者なのでは?その満足頂いた住宅の中で建築家として新しい提案が盛り込まれてたりします。

 

<岩鶴氏>
建築家が考えると本当に光の入り方や高さ(天井)のとりかたに工夫してますよね。
それもクライアントの要望だけでなく敷地の条件や周辺環境によってもすべて違う。同じ設計は一つもないですから。気持ちの良い空間が出来るのは間違いないですね。
同じ10畳の部屋があったとしてもそれはマンションやハウスメーカーの10畳の部屋とは全く違う場合があります。図面上ではなくその部屋に入って感じるものが違いますから。

 

 

(問)なぜそのような違いがでるのでしょう。

 

<岩鶴氏>
ハウスメーカーはモジュールが決まっているから設計を細かくは出来ないのが大きいですよね。
半間が910モジュールであったりメーターモジュールであったり。でも本当の意味での自由設計はそんな寸法にとらわれることはないんですよね。クライアントによっては幅が1メートルより1メートル5センチのほうがいいかもしれない。
例へば狭小や変形した敷地があってあと10センチ広げれば、もっとも土地を有効に使える、敷地に合わせて住宅も斜めの部分をつくれれば一番使いやすくなるなど。

 

<真銅氏>
モジュールの話がでましたが、先程も出てきた高さに対する考え方も違いますよね。
ハウスメーカーの天井高は商品によって決まってますけど、例へば2メートル70センチで天井高が高いですよという会社があっても、広い部屋ならいいですが、そこにもし4.5畳の和室をつくるとしたら、同じ天井高というのはありえないですよね。
基本和室は畳に座ったときのことを考えて設計するべきだし、どの部屋も広さに関係なく同じ高さというのは有り得ない。

 

<田口氏>
水廻りに関しても違いますよね。
システムキッチン、ユニットバスはもちろん使いますがクライアントの考えがそれと違う場合があります。建築家はキッチンの設計もしますし、お風呂も在来(タイル張り)でつくることも多い。それに対応できるメーカーは少ないですよね。
また、LDKでは作り付けの家具を最初から設計しますからインテリアの観点からいっても全然違うものになってくると思います。

 

<村木>
あとは使う素材も千差万別ですよね。商品でこの中から選んでくださいということではなく、使えるものは海外のものまで含めると本当に多い。床、壁、天井、水回り、外壁、屋根とすべてにおいてですからね。
建築家の中には、植栽の木を仕入れ前に現地までいって選んだり、材木を確認しに行ったりなんて話も聞きますし。

 

 

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<村木>
(問)建築家との家づくりに工務店は欠かせないものですが、建築家の立場から信頼できる工務店とはどのような工務店ですか?

 

<田口氏>
設計者の意図を読み解く力があるか?一緒にものづくりをしていくという考えがあるかだと思います。
我々設計者と工務店、クライアントまで含めて一つの住宅をつくるチームなのですから。昔みたいに設計者が大上段に立って工務店に上から指示を出す時代ではなくなってきている気がしますね。
職人さんたちにもクライアントの思い、設計者の思いを理解してもらって気持ちよく工事して欲しいです。それでもクライアントの依頼を受けてるのですから、工務店からアドバイスをもらうことがあっても 工務店が主体ということにはならないですが。

 

<生山氏>
アフターメンテナンスも含め小さい内容についてキチンと判断対応できる工務店さんは優秀だし信頼できるのでは。
クライアントはもともと敷居が高いと思ってこられてる方もいらっしゃるので、こんなことまでと思って私に相談せずに工務店さんに相談される場合もあるんですよね。設計者としては工務店に相談があっても重要なことは当然工務店側からフィードバックしてくれ
ますけど、すべてのことに対して設計者の確認を取ろうとする工務店も中にはあります。それは少し違うのではと思うこともあります。

 

<岩鶴氏>
良くわかります。
工務店の仕事は工務店の仕事。建築家の仕事は建築家の仕事。役割分担があると思います。
建築家にはどれだけ現場に引っ張られずに設計に集中できるようにしてあげるのが工務店の仕事でもあります。ましてはアフターメンテナンスは工務店の仕事なんでそこを建築家の手を煩わすことはしたくないですよね。
クライアントとしては建築家を全面的に信頼して進めてきてるのでどうしても建築家になんでも言うクライアントもいらっしゃいますが、是非直接言ってほしいですね。
またその信頼関係を工務店もクライアントと築けるようにしないといけないと思います。